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牛ふん堆肥❷
(つくり方・簡単なポイント)
前回のブログでも述べましたが、
牛ふんの中には、
多種多様な微生物(腸内由来)が存在します。
牛ふんを発酵させるためには
その微生物たち(特に有用な微生物)が働く環境を
整えなければなりません。
牛ふん堆肥づくりにおいて
私が師匠(佐藤隆司氏)から教わったポイントを
抜粋し、以下に紹介いたします。
まず1つ目は、水分です。
これが最も重要なポイントと言えます。
適正な水分は、55%~65%ほどです。
上図の写真のように山積みした時、
崩れない状態がベストです。
パサパサでもなく、グチャグチャでもなく、
シットリした状態です。
理由は
牛ふん堆肥中の多種多様な全ての微生物にとって、
最も良い環境だからです。
水分が75%以上になると、
山積みしても崩れてしまい、
嫌気的な(酸素がない)状態になります。
そうなると、
酸素を必要とする微生物(好気性菌)が働くことができません。
逆に嫌気的な状態になりすぎると、
硫化水素などをつくる菌や大腸菌(病原性)など
いわゆる悪玉菌などが優勢になってしまう恐れがあります。
その結果、病原菌の増殖や悪臭が漂うようになり、
『発酵』ではなく、『腐敗』となってしまいます。
これは堆肥に限らず、
牛舎の水回りや牛床などでも同じことが言えると思います。
続いて2つ目は、積み方です。
積み方は
写真のように円すい形にします。
前述した水分になっていることが前提ですが、
牛舎から床出し後、速やかに発酵が始まり、
発酵温度が上がってきます。
(もちろん気温や牛ふんの組成などにも影響を受けますが)
温度が上がると、湯気が出てきます。
暖かい空気(湯気)は軽いので当然、上に上がります。
上に空気が抜けていくと、
下の空気が上に引っ張られるようになります。
具体的には
堆肥下部の側面から、空気が入ってくるようになります。
発酵熱が高い中心部引き寄せられ、
そこから山の頂上へ向けて上がっていきます。
このような現象を『煙突効果』と言います。
皆さんも工場などで煙をモクモクと出している煙突を
見かけたことがあるかと思います。
その原理を牛ふん堆肥づくりに生かし、
全体に空気を送りくむことが可能になるのです。
だから、この積み方(円すい形)がポイントとなるのです。
最後に3つ目は、切り返しです。
切り返しをする理由は、
発酵品質を均一にする(ムラをなくす)ためです。
前述した水分と積み方により、
発酵が促進されることはご承知の通りです。
ですが、何らかの方法で切返しをしないと、
品質が均一になりません。
それは、堆積した牛ふん堆肥の外側と内側では、
発酵状態が異なるからです。
例えば、
外側は、好気的な状態(酸素が好きな微生物が優勢)になり、
内側は、嫌気的な状態(酸素が嫌いな微生物が優勢)になります。
発酵途中の牛ふん堆肥において、
場所によって棲んでいる微生物群(バランス)が違うのです。
棲んでいる微生物群が違えば、
有機物を利用して(食べて)生成するものも違います。
彼らは異なる仕事をしていますが、
どちらも大事であることはいうまでもありません。
いや実は、堆肥中の微生物(もちろん他の生物も)全てが
大事であり、多種多様な微生物がそこに存在するからこそ、
様々な分解や発酵物質の生成が行われて、
それが『発酵』に繋がるのではないかと思っています。
さて、具体的な切り返し方法ですが、
ホイルローダーなど何でも構いません。
また、切り返しする目安は、
最初は頻度を高くし、徐々に低くしていくイメージです。
ただ、頻繁にしすぎるのも、しなさ過ぎるのも良くないと
思います。
使う敷料や気候にもよりますが、
最初の数か月は1か月に1回程度、
その後は2~3か月に1回程度の切り返しを実施する
考え方もあるようです。
そのあたりは農場さん毎で、
試行錯誤しながら決めていくと良いでしょう。
切り返しをホイルローダーなどでする場合は、
すくい上げた堆肥をできるだけ高い位置から、
細かく揺らしながら落とすと、ダマが砕けます。
以上、牛ふん堆肥づくりの簡単なポイントでした!
次回は、発酵牛床の仕組みについてです。
乞うご期待です!